弁護士 宮本 督
エッセイ:to be a Rock and not to Roll
MONEY
プライベートでも仲良くお付き合い頂いている顧問先の社長さんがいる。まだ40代と若い社長だが、借金だらけだった父親の小さな会社を20代で引き継ぎ、現在では従業員数も100名を優に超える大きな会社に育てている。
当たり前だが、大変な苦労もあった。
経営者なら誰でもそうだが、資金繰りのことは常に頭から離れない。手形の決済、給与や買掛金の支払と銀行に対する返済。眠れない夜も多い。経営者は孤独だ。会社が潰れるかも知れない...。そんなことは、誰にも相談できない。
社長さんの会社では、業態上、大きめの設備投資が必要なため、銀行取引が欠かせないのだが、銀行との付き合いで辛酸をなめたことも少なくない。30歳の頃、資金の必要があって、予め期限に余裕を持って銀行融資の申込をしていたところ、審査を忘れられてしまったことがあった。社長は、その小さな地方銀行の小さな支店の年下の担当者のフルネームを今も忘れない。
そんな社長は酔っ払ってカラオケに行くと、浜田省吾の「MONEY」を熱唱する。
「いつかヤツラの足元にビッグマネー、叩き付けてやる。」いろいろな思いが去来するらしい。普段の温厚ぶりなど、どこかに忘れて、ホステスさんたちも目を丸くしてビックリ仰天の熱唱だ。
昨夜、そんな社長さんと、浜田省吾の4年ぶりのコンサートツアーの最終日、さいたまスーパーアリーナ公演に行ってきた。浜田省吾のコンサートは、私自身も4年ぶり。実は、4年前のコンサートも社長と一緒だった。
コンサートの中盤。「MONEY 」の演奏が始まると、社長は、文字通り狂喜乱舞。ここぞとばかり、ステージの浜田省吾よりデカイ声で、びっぐまねーぇぇぇ!タ・タ・キ・ツーケーテーヤール!と絶叫。そして、曲が終わると、私と目を合わせ、恥ずかしそうに、でも少し満足げに微笑んだ。