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弁護士 宮本 督

エッセイ:
to be a Rock and not to Roll

2005.07.30

酒に費やしたもの

 初めて酒を飲んだのがいつのことだったか忘れてしまったけれど、大学生になった頃からは、文字通り「毎晩のように」、飲んで飲んで飲まれて飲んでの日々でした。泥酔して大変なことをしでかしたり、酔いつぶれて記憶を失ったり、楽しかったり、失敗したり、元気になったり、イヤになったり、イロイロありました。って、本当にイロイロあった。
 学生時代。司法試験を受けていた頃。司法修習をしていた頃。弁護士になった後。暇な頃、忙しい時期。飲む場所とか、飲む相手とか、飲み方とか、飲む酒とか、どんどん変わっていったし、日々の単位でもクルクル変わるけれど、でも、結局、アルコールを摂取しない日はほとんどなし。
 んで、酔っ払って、帰って、眠る。昼間の出来事はもちろん日替わりだけど、夜は一緒。毎日、毎日。それだけは同じ。
 そして、そうじゃない連中、要するに酒を飲まないヤツらって、毎日、一体何をしてるんだろう、と行きつけの飲み屋で、常連同士、よく話題にした。でも、そこにいる男達って、大酒飲みばかりだから、誰もそんな健康な人達の生態について知る由もなく、私の中では深い深い謎となっていた。
 それから、ふと思うこともあった。初めて酒を飲んだ日から、酒に費やした時間と金はどのくらいのものになるだろうか、と。そしてさらに考えた。酒に使った時間と金をまったく別のことに振り向けていたら、私は、今頃、ヒトカドの人物になっていたのではないか、と。
 もちろん、酒って、無意味だから。潤滑油とかエネルギーとか、グダグダと言い訳しても仕方ない。酒は無意味。ホント、意味ない。でも、好きだし、まあ、それだけじゃなくて、何となく毎晩飲んでいたけれど、それを止めていたら、私ってば、今頃、とてつもなく偉い人になっていたかも知れない、と思ったりします。馬鹿で結構です。思うくらい、いいじゃないですか。私の勝手でしょ。結局、酒を飲まなかったとしても、私、もっともっと、ろくでもないことに時間や金を遣っていたに違いないとは思いますけどね。
 ただ、最近、毎晩のように飲み歩くのに、いい加減、飽きてきていて、実際、この1ヶ月くらいのことなんですけど、ほとんど飲みに行かなくなっています。毎晩のような酒の大量摂取なんて、もう考えられません。禁酒したという訳じゃないんですが、ただ何となく、飲まなくなってしまったんです。
 もしかしたら、長年の懸案だった酒を飲まない健康な方々の生態が判明する日も近いかもしれません。それだけじゃなくて、そんな健康生活、充実生活を実践できるようになるかも知れません。
 そしてさらに、それだけじゃありません。近い将来、私、ヒトカドの人物になるかも知れません。
 まあ、皆さんにとっては、別にどうでもいいことだとは思いますが。