弁護士 宮本 督
エッセイ:to be a Rock and not to Roll
オンライン英会話(はるかなるフィリピン)
最近は、毎朝、英会話のレッスンを受けている。駅前とかに出掛けるやつじゃなくて、オンラインでのレッスンだ。スカイプを利用して、25分間、先生と一対一で、英語で会話をする。私の場合は、ニュース記事を教材に使っている。まず、その日のニュースを音読。発音とかの誤りがあれば指摘してもらって、その後、そのニュースの内容や、背景や、関連する出来事について話し合ったりする。25分間は、あっという間だ。言いたいことがうまく英語で言えないことのもどかしさを体験しながら、それでも数か月、続けているうちに、少しずつだけど、上達してきたと思う。
驚くのは、その価格だ。一日1レッスン(25分間)を毎日受けられて、月に5500円(税込)だから、1レッスン当たり180円。繰り返しになるけど一対一のレッスンだ。講師の報酬が格安だから成り立つ仕組で、その多くはフィリピン人。業者の取り分を考えると、彼らは約30分の労働で100円程度しかもらえない計算で、経済格差に茫然としてしまう。
このレッスンを始めるまでは、フィリピンにはほとんど興味がなかった。大昔に、一度、旅行でセブ島を訪れたことがあるが、リゾートホテルからほとんど出掛けずに過ごしたし、東京で「フィリピンパブ」なんて所にも一回か二回しか行ったことがない。あの行儀の悪いドゥテルテ氏が大統領になって、ちょっと話題になったけど、それ以外、フィリピンのことなんて、はっきり言って何も知らなかった。でも、毎朝、フィリピン人たちと話をしているうちに、英会話のことだけじゃなく、フィリピンという国や人々のことに興味が湧いてきた。いつも熱心に笑顔で一生懸命に教えてくれるし、私のたどたどしい英語にも根気強く付き合ってくれる。この人たちのことや、この人たちの暮らす国のことを知りたいと思うようになった。
というわけで、最近、フィリピンが舞台の小説や、フィリピンの経済や歴史や文化やらを解説した書籍を買い込んで読んでいる(古い人間なもので、ネットより、本の情報の方を信用してしまう。)。そこで知った生半可な知識を朝のレッスン中に披露してみると、驚かれたり、訂正してもらえたりして、レッスンのマンネリ化も少しだけ防げる。
しかしホントに申し訳ないのだが、フィリピンのことを知れば知るほど、行ってみたいとか、まして暮らしてみたいとか、思えなくなる。講師の一人に、刑事専門の弁護士の妻だっていう女性がいて、夫が、警察官に拳銃で撃たれそうになったなんて、想像を絶する話を聞いたりすると、フィリピンで弁護士をしていなくてよかったと心から思う。やっぱり、ボクらって、政情が安定していて、格差が少なくて、治安がよくて、衛生的で、インフラが整備されていて、公務員もそれなりに働くっていう環境を、当たり前じゃなくて、もっとありがたく思わないといけないなって、これが、最近、私が、英語の勉強を通じて学んだ最も大事なことかも知れない。