弁護士 宮本 督
エッセイ:to be a Rock and not to Roll
パワーハラスメント(パワハラ)
「パワーハラスメント(パワハラ)」って、10年くらい前(平成14年秋)に作られた和製英語らしいけど、社会問題化・日常用語化のスピードが異常に速かったように感じられる。判例検索ソフトで調べてみると、やっぱり、造語からわずか1年半後の平成16年2月の東京地裁の判決で既に「パワーハラスメント」という言葉が登場し、平成18年4月の京都地裁の判決で初めてパワハラによる賠償請求が認められていた。
ただ「パワハラ」って、もちろん法律用語ではないし、裁判例にも一般化した定義はないようだが、昨日(平成24年1月30日)、厚生労働省の「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ」が、パワハラを定義して見せてくれた。
こんな感じ。
「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」。
ふーん。
んで、パワハラは次のように分類されると。
①暴行・傷害(身体的な攻撃)
②脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)
③隔離・仲間外し・無視(人間関係からの切り離し)
④業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害(過大な要求)
⑤業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと(過小な要求)
⑥私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)
あら、そう。
続いて、予防策。
①職場のトップが、職場のパワーハラスメントは職場からなくすべきであることを明確に示す
②就業規則に関係規定を設ける、労使協定を締結する
③方針やガイドラインを作成する
④従業員アンケートを実施し、実態を把握する
⑤研修を実施する
⑥組織の方針や取組について周知・啓発を実施する
うむ。
最後は解決策。
①企業内・外に相談窓口を設置する、職場の対応責任者を決める
②外部専門家と連携する
③行為者に対する再発防止研修を行う
なるほど、画期的で目新しいことばかりで、とっても勉強になります。
というわけで、いつものとおり、お役所って、ほんとお気楽で何の役にも立たないわけだけど、それはそれとして、パワハラとかセクハラとか、そういった企業社会内部の問題が法律事務所に持ち込まれるケースは格段に増えている実感がある。そして、会社サイドで相談を受ける弁護士として神経質にならざるを得ないのは、会社は、一応、加害者(例えば横暴上司)側でも、被害者(例えば軟弱平社員)側でもないので、横暴上司に対しては会社として処分を考えないといけなくて、軟弱平社員からは会社が横暴上司と一緒に訴えられる可能性も踏まえないとならず、かつ会社として今後の再発防止策を考えなきゃならないという状況なんだけど、関係者の間で事実関係についての言い分は食い違うのが当たり前だし、それだけでなく、横暴上司がちょっとキツイ対応をとっていたとして、それが教育目的だったのか、嫌がらせ目的だったのかなんて、ハッキリ言って全然分からないけど、一応、何らかの決めつけをした上で、処分とか謝罪とか、何でもいいけど「解決」という「形」をつける必要があるという点にあったりするわけだけど、まあ、もういいや。
いつも思うけど、勤め人って、いろいろ守られていて、うらやましいな。
なんでもありません。