弁護士 宮本 督
エッセイ:to be a Rock and not to Roll
バタフライ・エフェクト
毎月、恥ずかしい話ばかりなんだけど、こないだ、浜田省吾のコンサートに行ってしまった。アツ苦しくて悪いね。
コンサートの終盤、「君と歩いた道」ってのが演奏されて、「もし15才のあの夏に戻って そこからもう一度やり直せたら どんな人生送るだろう? 」って歌なんだけど、私が人生をやり直すとすると、私の周りまで、ガラッと変わるよね。分かり易い例では、私が、あの日あの時、大学の生協の前で司法試験予備校のパンフレットを受け取らなかったら、弁護士になんてならなかったはずだから、少なくとも、その後、仕事上で出会った多くの皆様にはお会いすることはなかったと思う。そうすると、私が仕事上で関係したありとあらゆる方々の人生は、多かれ少なかれ違ったものになっていたはずなわけで、今さら子供じみた空想で申し訳ないけど、考えてみたら不思議。大昔のある日、私が左足からではなく右足から歩き出していたら、私の人生だけじゃなくて、少なくとも私の周りの世界は大きく大きく違うものになっていたんでしょう。
「バタフライ・エフェクト」っていうとっても面白いアメリカ映画があって(ちなみに、このタイトルは、北京で蝶が羽ばたくとニューヨークで嵐が起こるっていうカオス理論の有名なたとえ話。)、主人公には、時間を遡って過去をやり直せるという特殊能力が備わっている。彼は、何度も過去をやり直して、するとその度に未来は劇的に変化するんだけど、その変化は彼の予想と期待を常にはみ出しちゃう。まあ、そりゃあそうかな。あの日やあの時に戻って、その瞬間をやり直すことができるとしても、それで周りも違ったものになる以上、その選択の後に起きる出来事までコントロールすることはできないもんね。
ちなみに浜田省吾の歌は、最後、「もし15才のあの夏に戻って そこからもう一度やり直せても この人生を選ぶだろう 君と歩いた道をもう一度歩くだろう」となる。
そんなオチならこんな歌を作るなよなあとも思ったけど、そうすれば、バタフライ・エフェクトとか難しいことは考えなくて済むし、だいたい、今、幸せな人も、不幸せな人も、やり直してみたら、結局、同じ人生にたどり着くんだろうね。違うかな?