弁護士 宮本 督
エッセイ:to be a Rock and not to Roll
メディアがホリエモンを実刑にした
ホリエモン、実刑になっちゃったね。控訴したそうだから、今後、どうなるかわからないけど、まあ大変なことだ。クレイジーで野蛮な判決だけど、もうこれって、一つの判例として、今後は、量刑の基準の一つになっていくことになる。
起訴事実については、ホリエモン本人としてみれば、なんのこっちゃって、感じだと思う。勝手な想像だけど、あの連中って、あそこまでになるまでの間、目をつぶって、エイヤって感じで、やっちゃった悪いことが沢山あったと思うんだよね。でも、起訴されたのは、そんな覚悟を決めてのことじゃなくて、例えば、ヒヤヒヤ・ドキドキしながら万引きをした後の帰り道で何気なく信号無視をしたら、万引きじゃなくて、信号無視の方を摘発されたような感じだったんじゃないかな。例えが不適切かしら。
資本取引を売上に計上したのは、そりゃ粉飾と言われてみれば粉飾なのかも知れないけど、投資事業組合を使ったあの方法って、会計ルール上、問題ないという見解も充分にあり得るわけで、って、そーゆー立場で公認会計士はOKを出していたわけで、その会計士も実刑になっちゃったけど、ITオタクのホリエモンが、事態を把握していたとしても、その会計士見解は間違ってるから、危ないから、今回はやめようかな、なんて一秒も思わなかったはずだ。
そんなことより、判決を受けての率直な感想は、メディアの力って、途方もなく甚大で恐ろしい、ってこと。
永田町とか霞ヶ関とか桜田門とかの大人たちが、ホリエモンをぶっ叩いたのは、大人たちなりの不快感や恐怖感もあってのことと思うけど、それよりなにより、「世論」というか「空気」というか、そんなのを受けてのことで、その世論とか空気って、要するに、いつものとおり、見識なんてかけらもないマスコミがつくるんだよね。
「事実があるから報道があるのではない。報道があるから事実があるのである。」って、山本夏彦さんの警句だけど、あいつ調子に乗ってるぜ、同好会みたいなノリでふざけやがって、もうけやがって、という空気感は、ぜーんぶメディアがつくったもの。もちろん、ホリエモンのキャラクターも寄与してるけど、フジサンケイグループなんかは、直接攻撃を受けていたわけで、そりゃ反発もしたわけだ。片言とか隻句とかだけをクローズアップしたり、事実の一面だけを切り取って、それを何回も何回もテレビで流したりすると、あら不思議、ある人やある会社のイメージなんて、簡単にでっち上げられちゃうから、恐ろしい限りだ。
そう言えば、あの牛乳食中毒事件の時の社長の「私は寝てない」なんて、2時間以上の記者会見の後の発言なんだけど、テレビは、記者会見でのまともな受け答えじゃなくて、あのシーンだけを繰り返し流して(だから、まだ、みんな覚えてるでしょ。)、そしたら、警察まで、発表が遅れた間に牛乳を飲んで発症した人に対する業務上過失傷害罪ってことで立件して、書類送検してた。アホや。さすがに逮捕や起訴はされなかったけど、メディアって、ほんと、強大な権力者だ。
マスコミの連中なんて、選挙で選ばれたわけでもないし、なんかの資格があるわけでもない。ただ、電波を飛ばす免許をもらってるだけだ。そんな電波少年連中が、世論というか、空気というか、そんなもんを勝手にこしらえて、そんなものにみんな乗っかって、世の中はグルグル回る。そー言えば、最近、「空気読め」なんて、途方もないことを言う人がいるね。南無阿弥陀仏。納豆でも食ってダイエット頑張っとけや。
だいたい、ホリエモンが実刑なら、日興コーディアルグループの幹部たちなんて、いったい何年刑務所に入ればいいんだろう、って感じだ。なのに、日興って、捜査すらされていない。上場だって、ちゃっかり維持だ。馬鹿らしいねえ。格差社会とかなんとか、つまんないこと言ってる場合じゃないよ。せめて、税金と司法くらい、平等であって欲しいと思うけど、まあ、無理だね。良識を持って平等になんてやってたら、メディアの皆々様方にご納得頂けなくて、今度は自分たちが袋だたきにあうかも知れないもんね。