弁護士 宮本 督
エッセイ:to be a Rock and not to Roll
サイパン島にて
お休みを頂戴してサイパンに行って来ました。昨夜、帰国しました。
日本というか、東京の景気は絶好調のようですが、サイパンの経済は明らかにどん底の底です。街にはまったく活気がなく、寂(さび)れて、廃(すた)れて、荒(すさ)んでいました。
話を聞いてみると、深刻な財政危機状況で、昨年の秋からは、土日だけじゃなく、2週間に一度は、金曜日も、公務員の人件費削減のため政府の業務が停止されているそうです(警察、消防、病院、小中学校等を除く。)。
島では、昨年、最大の縫製工場が閉鎖となり1500人が解雇されました。1500人って、人口の3%に当たります。工場労働者の多くは中国人だったそうで、家族も含めると、一体、何人が島を出たのか分かりません。もともと、サイパン経済は、観光より、縫製産業によって支えられていたそうです。サイパンで縫製された洋服はMADE IN USAとして売られ、米国本土市場では、関税も輸入制限もないため、一時は狭い島に25以上の縫製工場が稼働していたのですが、中国が世界貿易機関(WTO)に加盟したことで、中国の縫製品が米国本土で競争力を持つようになり、サイパンの縫製産業は、中国との過当競争の中で衰退を余儀なくされました。
観光客も激減しています。アジア通貨危機、テロ、戦争、SARSと、短い間に大きなパンチを立て続けに食らい、とどめは一昨年秋のJALのサイパン路線からの撤退でした。知りませんでしたが、一昨年は日本の天皇がサイパンを慰霊のために訪問したそうで、現地では、日本で、再びサイパンへの観光がブームになると期待された矢先の出来事だったそうです。今、日本からはノースウェストが飛んでいますが、日本人観光客は、30%に近い激減です。
サイパン中心部のメインストリートはシャッター通りと言うに相応しく、目抜き通りの交差点の2階建てのビルも、窓ガラスが割られ、テナントが入らないまま。日が暮れた後、駐車場では男の子たちが暗い顔のままバスケット・ボールをしていて、歩道には痩せた放し飼いの犬(野良犬ではないらしい)がウロウロしていました。ホテルやレストランで働いているのはフィリピン人ばかりで、彼らに、ネイティブのチョモロ人たちはどんな仕事をしているのかと聞いてみると、「連中は、泥棒と生活保護で食っているのさ」と教えてくれました。島で唯一、元気なのは、大声で中国語を話す団体旅行者くらいのものでした。
天気は最高で、青い空と白い砂と透明で静かな海。私は、滞在中ほとんどずっと、ダイビングを楽しんでいました。自然の素晴らしさは、経済とか景気とかには何の関係もありませんので、私は、ダイビングのため、再びサイパンを訪れることもあるかと思います。でも、あの経済状況の立て直しは至難の業と思われます。現地のニュースを見ていますと、いろいろな再建計画があることが前提の報道がされていましたが、悪趣味ながら、その計画の奏功を確認するという、サイパン再訪の楽しみが一つ増えたかなと感じています。