銀座数寄屋通り法律事務所[旧 中島・宮本・溝口法律事務所] >HOME

弁護士 宮本 督

エッセイ:
to be a Rock and not to Roll

2006.01.01

オグリキャップとハルウララとディープインパクト

 競馬ファン以外ではあんまり覚えていないかも知れないけれど、オグリキャップの、あの感動的な引退レースは、中山競馬場のスタンドの上の方で観ていた。15年前、平成2年の有馬記念。
 オグリはもうボロボロで、私だけでなく、ファンの多くが、「もう、これ以上走らせずに、引退させてやって欲しい」と願ったものだった。当日のパドックでも、なんだか疲れた感じで、勝とうとしなくていいから、無理しないで、無事に回ってきてくれればそれでいいから、と思ったし、オグリが、最後の4コーナーで先頭に並びかけても、「おいおいよせよ、もうわかったから、それくらいで止めておこうぜ」という感じだった。...と思う。でも、メジロライアンとホワイトストーン(だったと思う。)の猛烈な追い上げにあいながら、オグリは脚を伸ばした。私は、いつの間にか、イスの上に立ち上がり、丸めた競馬新聞を握りしめて振り回し、声の限りに応援していた。もう馬券なんて関係なかった。オグリが先頭でゴールしてウィニングランをする中、スタンドは大歓声で、みんな感動して目を潤ませていた。ギャンブルのはずなのに、ファンが皆、馬券を離れて、一頭の馬を応援するというのは、あれが初めてのことだったのではないかと思う。
 あれから15年。そういえば、武豊は、あの年から有馬記念を勝っていない。メジロマックィーンでも、スペシャルウィークに乗ってもダメだった。昨年暮の第50回有馬記念。無敗の三冠馬で圧倒的一番人気のディープインパクトに鞍上の武豊は、また敗れた。
 ディープインパクトへの声援は、オイルショックの頃のハイセイコーに対する熱狂や、バブル経済の頃のオグリキャップ人気になぞらえられている。景気回復が待望され、何となく浮揚感がある中で、でもそれがとても弱々しいものだから、勝ち馬に乗りたい気分が投影されているのかも知れない。そういえば、数年前、景気が最悪の頃は、地方競馬で、デビュー以来、1勝もできないまま100連敗以上を続けたハルウララが大ブームになった。もちろん有馬記念じゃないけれど、武豊でも勝てなかった。ディープインパクトとのコントラストは強烈だ。「勝ち組」と「負け組」って言うんだっけ?
 でも、負け組だって、不景気の中、才能はないけれど一生懸命な感じが受けたらしい。グッズが売り出されるほどの大人気で、単勝馬券は、「当たらない」に引っ掛けて、交通安全のお守りにされていた。当たらないわけで、換金されることがないから、ハルウララの単勝馬券を手許に置いておくのはいいとして、菊花賞での、勝ち組ディープインパクトの1.0倍人気の単勝馬券を取り置いて換金しない人は、何のお守りにしてるんだろう。まあ、人のことなんてどうでもいいけど、有馬記念でのディープインパクトの単勝馬券は、みんな捨てちゃったのかな?だけど、どんなに強い者でも敗れることがあるという厳しい現実のシンボルとしてはこれ以上ない「お宝」かも知れない。それに、もしかして、今年、やっぱり不景気に逆戻りしてしまえば、ディープインパクトの敗戦は、マイナス景気へのターニングポイントとして記憶されることになるかも知れないし。
 そういえば、オグリのラストランから15年。私は、あの日から競馬場に足を運んだことがない。特別な理由はないけど。いつの間にか、馬券を買うことはおろか、競馬中継を観ることすらなくなった。だから、どうと言うこともないんだけど。
 以上、前置きが長くなりました。
 唐突ながら、皆様、明けましておめでとうございます。本年も、どうぞよろしくお願い申し上げます。