弁護士 宮本 督
エッセイ:to be a Rock and not to Roll
アクセル・ローズはどこへ行ったのか?
古い友人から深刻なE-MAILが届いた。メールの最後で、SR-71という変な名前のロックバンドのニューアルバムを勧められた。メールのあんまりにもあんまりな内容に、しょーがない。早速購入。
1曲目のタイトルは、"アクセル・ローズ"。Where did you go,Axl Rose?っていう歌い出しで、ガンズ・アンド・ローゼズ(GN'R)のクレイジーなボーカリストをモチーフにした80年代ロック世代の仲間達のストーリー。
GN'Rを、知らない人っている?87年発表のデビューアルバムはヘビーメタル史上最高作品。当時、ローリング・ストーンズやエアロスミスがどうしようもない低調ぶりで、GN'Rは、高校生から大学生の頃の私にとっては、最高のヒーローだった。まだ高校生で、酒とタバコと××だって覚えたてのかわいらしい田舎の不良少年には、彼らは鮮烈すぎた。CDもカッコよかったが、ライブは、もうメチャクチャすさまじかった。日本武道館公演の後、会場の外で、興奮したガキたちが大喧嘩してて、それに(わざと)巻き込まれて暴れ回ったのもいい思い出だったりする。要するに、GN'Rなのである。GN'R と言えばGN'R。GN'Rの前にGN'Rはなく、GN'Rの後にGN'Rはない。さて、GN'Rって何回書いたか?
んで、SR-71の"アクセル・ローズ"。歌の主人公の女性は、80年代な空気感を引きずったまま。カラオケ屋でボン・ジョビ(!)の古い曲を歌う男性と出会う。時代遅れな二人を皮肉る歌詞は「アクセルはどこに行ったのか」って繰り返し、その合間合間に、GN'Rの有名な曲のギターフレーズをバンバン借用。コミカルだけど、ポップでなかなかいい感じだ(でも、訴えられても知らねーぞ)。
さてと、深刻なトラブルを抱え込んだ友人も、まだ80年代な気分のままらしい。ふと思う。80年代。ティーンエイジャーだった頃の仲間達。大人になってみて、みんな、どうやって、人生と折り合いをつけてるのか。誰だって、等身大の自分や身の回りの変化と向き合うのはメンドクサイし、それだけじゃなくって、ホントにシンドイんだなと。それから、アクセル・ローズって、もう40歳を過ぎたはずだけど、ホント、どこに行っちゃたんだろうと。
私は、あの頃と比べたら20キロ以上太ってる。でも、外見だけじゃなくて、中身も、何も変わってない気でいるけど、他人から見たら、ちゃんと変わってしまったんだろう。当時の自分は、今の私をみたら何と言うか?会わせる顔はないような、でも、あの頃の私に教えてあげたいこともあるような。そうはいっても、高校生の宮本少年は、今の私の言うことに耳を傾けるはずもないだろうけど。ただ、醜いまでの変化のおかげで、毎日のドロドロやグダグダやその他の何やかんやを、なんとかうっちゃって生き長らえてるような気もするんだけど、そんなことをしたって、やってることは永遠のシャドーボクシングみたいなもんかも知れず、そんなことのために生き延びて、いったい何になるのかねえという声も聞こえなくもない。と、結局、考えはいつものとおりまとまらず、形而上学との付き合いは長く続かない。
まー何でもいいや。明日からは、またちゃんと仕事をしよう。なんだかんだ言っても、大人になったわけだし。おーい。ヨージ。そのうち電話するよ。久しぶりに飲みに行こうぜ。