弁護士 宮本 督
エッセイ:to be a Rock and not to Roll
TO BE OR N0T TO BE(再生か破産か)
経営に行き詰まり、融資の道も断たれた。
経営者としては、つらい決断を迫られる。―倒産だ。
バブル型とか不況型とか、昨今は貸し渋り型とか、いろいろあるようだが、経営者にとって、倒産原因の分類や分析は、何の意味もないと感じるだろう。要するに、会社は、もう駄目なのだ。
でも、逃げ出すわけにはいかない。とにかく重要なのは、倒産後も見据えることだ。当たり前の話だが、たとえ会社は死を選ぶしかなくても、経営者自身は、明日からも生きていかなければならない。たとえ、破産して会社が消滅するとしても、経営者か後継者は業界内での再起をはかり得る状況を用意しなくてはならないし、少なくとも、連帯保証人にさせた親族に会わせる顔がない状態になっては救いがない。
ちまた、「倒産本」の類は多い。読めば、倒産にもいろいろあることを教えてくれる。でも、いろいろあるのはわかるけど、じゃあ、いろいろあるうちで、どれを使ったらいいのか、要するに、うちの会社は、どうすりゃいいか、教えてくれる本はない。
それに、本が多くなると、自然発生的に「トンデモ本」(とんでもない、嘘八百の記述だらけの本の意。約15年前、千葉県船橋市内のごく一部で多用された。)があふれてくる。そして、この分野、このトンデモ本が極めて多い。会社の再建に無根拠に太鼓判を押し、一時しのぎだけを奨励する本。明白な犯罪を薦める本。強制執行妨害罪の教唆か幇助かで処罰された方がいいと思われる著者もいる。経営コンサルタントとか、倒産コンサルタントとか、それを名乗られるのは大変結構だが、それにしたってねえ、という本が多い。そして、そーゆー本に限って、弁護士が役に立たないとか書いてる。おいおい、大丈夫なのか?
倒産事件を日常的に手がける弁護士としては驚き、呆れかえる。このようなトンデモ本を信じて、実践する経営者がいないことを、ただ、ただ、祈るばかりだ。
でも、文句ばかり並べていても仕方ないので、自分で倒産本を書き下ろすことにした。夏までには書店に並べる予定。わかりやすく書けるか。役に立つ本になるか。それは、夏までの間、どれだけ仕事に余裕が持てるかにかかっているのだが...。