弁護士 宮本 督
エッセイ:to be a Rock and not to Roll
懐メロコンサートにて
11月13日、東京ドームでポール・マッカートニーの日本公演を観てきた。別にビートルズが好きなわけでもないけど、知らないわけもないし、事務員さんに誘われるまま当日券を購入してみた。
1曲目「Hello Goodbye」から、その後も、ビートルズ解散後の曲を織り交ぜながらも、ビートルズ時代のヒット曲を連発。
でもねえ。5万人の皆様は「それなり」の盛り上がり。会場は、なんというか「なまあたたかい」というか「なまるぬい」雰囲気。往年のパワーは期待できるはずもないけど、ただ、みんな、ポールのこと尊敬してて、それで、何でも許されてるような、そんな感じ。
ポールは、もう60歳。ジョンも、ジョージも、リンダも、みんな死んだ(そういえば、リンゴ・スターって、何してるのかな?)。死人たちに捧げる歌も、それぞれ1曲ずつ。なんだか、ミジメなおじいさん。かつてはジョージがボーカルをとった「Something」は、ウクレレ1本で演奏された。あらら。
「Blackbird」も、「Fool On The Hill」も、「Eleanor Rigby」も、「Michelle」も、「Here There and Everywhere」も、あたしゃ、好きだよ。好きだったよ。でもねえ。この物悲しさは、一体、なんなんでしょう?
今年は、いつになく、たくさんコンサートを観てる。最近でも、9月には代々木体育館のオアシス公演に行ったし、10月には、武道館でシェリル・クロウを観た。いい演奏もあったし、がっかりすることもあった。でもね、きれいな音で録音されたCDがあるのに、ファンがコンサートにまで足を運ぶのは、それなりの理由があって、その一つに、そのミュージシャンの「今」とか「進化」とかを聴きに行くというのがあるのではないかなと思うわけで、古い歌でも、解釈をかえて演奏されるのに、納得したり、不満だったりするわけでね。
コンサートは、「Let It Be」、「Hey Jude」の大合唱、「The Long and Winding Road」、「I Saw Her Standing There」、「Yesterday」と予定調和な終盤をこなして、「Sgt. Pepper's Lonely Heart's Club Band」から「The End」で終了。全35曲くらい。一説によるとポールのギャラは、1公演で3億円。ってことは、1曲あたり約1000万円。ふーん。
そういえば、オアシスのライブでは、最後の最後にザ・フーの「My Generation」が演奏された。シェリル・クロウは、エンディングで、弾いていたピアノの上に仁王立ちして、レッド・ツェッペリンの「Rock & Roll」を熱唱。ポールが歌ったのは、ほとんど、それと同じくらいのクラッシックソング。でも、進化も期待も希望も興奮もなく、あるのは、ただの衰退。「今」に何の理由も必要もない老人の独演会。コンサートから数日たつけど、あれ以来、何か、疲れが溜まっちゃってねえ。
先日、キース・リチャーズのインタビュー記事を読んでたら、「ローリング・ストーンズは、ビートルズと違う。俺たちは、まだ、転がり続けてる」って言ってた。来年3月のストーンズ東京公演まで、私の疲れはとれないのかも知れない。