弁護士 宮本 督
エッセイ:to be a Rock and not to Roll
2001.09.14
1つのひらめきと99の訴訟
優れた発明を持つ企業は多い。特許出願もしている。しかし、それでことが足りるわけではない。
「発明は1つのひらめきと99の努力」という言葉を残した発明王エジソンは、発明の100倍以上の数の訴訟を勝ち続けることで地位を確固なるものとしたという。また、MS・DOSと呼ばれるPCのオペレーティング・システム(OS)を発明したビル・ゲイツも、弁護士である父親の助けを借りて、発明を法律で武装させ、類似アイデアを訴訟によって押さえ込み、事実上の独占市場を勝ち取っていった。
ただし、特許による武装のためには、一つのすばらしい発明品の中心的権利の登録だけでは足りない。競争相手は巧妙に特許侵害にならないように、くぐり抜けの模倣品を製造・販売しようとするからである。そこで、発明者・特許権者は、基本となる特許権を取得するのと並行して、その周辺の材料や製造法等の技術や意匠等あらゆる角度から見た物的・技術的ノウハウを含めて工業所有権の登録をし、他社からの侵害を防衛する必要がある。いわゆる周辺特許、防御特許等といわれる権利である。
そして、その上で、特許の侵害者に対し戦闘を挑む。特許侵害に対しては決して妥協してはならないが、戦闘の方法は、侵害者のうちの最大手に挑むか、それとも、弱小侵害者を論破し続けて裁判例等の集積を重ねるか、戦いの方法については特許法に詳しい弁護士の指南を受けることが望ましい。
特許に限ったはなしではないが、法律上の武装と戦闘には手間暇とコストがかかる。しかし、特許権が莫大な利益を生んだ例は枚挙にいとまがない。そして、常に、後悔は先に立つことはない。