企業と法律
企業倒産
企業のための民事再生の法律相談
弁護士 宮本 督
8. 民事再生とM&A
(4) 民事再生手続における営業譲渡の活用
営業譲渡は、企業の財務リストラにおいて、極めて有用な方法でありながら、民事再生以外の倒産手続によっては、実行が困難な場面が想定されています。
特に、資産の劣化を防ぎながらスピーディーな処理をしなければならない一方で、後に、営業譲渡の効力を否認されてしまうというリスクを回避することは、民事再生手続による他にないともいえるでしょう。
民事再生手続では、下表のとおり、[1]DIP制度、[2]営業譲渡の明文化、[3]裁判所の代替許可、[4]担保権消滅請求制度などが規定されたことにより、迅速かつ確実に営業譲渡を行うことか可能となっています。そのため、手続申立前に営業譲渡の準備を周到に進めたうえで、「否認リスク」の回避のために民事再生の申立を行って、保全処分によって資産の保全を図りながら、開始決定後、直ちに営業譲渡を実行するという方法が有効な手段となります(プレパッケージド申立と呼ばられています)。
DIP制度 | 申立後も従来の経営陣が引き続き経営を行うことができるため、プレパッケージド型申立も、より安全かつ確実に行うことができます。 |
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営業譲渡の許可 | 営業譲渡の許可 開始決定後、裁判所の許可によって、営業譲渡が可能とされました。 |
裁判所の代替許可 | 債務超過の場合、裁判所は、株主総会の特別会議に代わる許可を債務者に与えることができます。 |
担保権消滅請求制度 | 事業継続に不可欠な財産上の担保権について、時価相当額を納付することによってすべての担保権を強制的に抹消することができます。 |