企業と法律
企業倒産
企業のための民事再生の法律相談
弁護士 宮本 督
4. 再生債務者の財産調査・財産確保
(5) 否認の請求
民事再生手続では、否認権の行使方法について、破産手続にはない簡単な手続として、「否認の請求」という制度が用意されました。「否認の請求」とは、再生裁判所が、否認の請求の原因たる事実(否認の要件)についての疎明により、簡易に否認の可否を判断する制度で、会社更生手続において創設された制度です(会社更生法82条)。再生手続においては、簡易・迅速な否認権行使を可能にするため、否認の請求の制度が採用されましたが、否認権行使をするにあたって、訴えによるか否認の請求によるかは、否認権行使を行う監督委員または管財人の裁量に委ねられています。
否認の請求は、再生裁判所に対して行います(135条2項)。否認の請求をするためには、請求者において否認の原因事実を疎明しなければなりません(136条1項)。再生裁判所は、否認の請求に対し、認容または棄却の決定をすることになりますが(同条2項)、この決定をするには、相手方または転得者に攻撃防御方法提出の機会を与えるため、審尋を経なければなりません(同条3項)。なお、この手続において、当事者が提出することができる証拠は、即時に取り調べることができるものに限られますが(19条、民事訴訟法188条)、裁判所は、申し出のない証拠を職権で取り調べることができます(8条2項)。
否認の請求を認容する決定があった場合には、その決定書は当事者に送達され(同条4項)、否認の請求を認容する決定に不服がある者は、その送達を受けた日から1カ月以内に、異議の訴えを再生裁判所に対して提起することができます(137条1項・2項)。異議の訴えの判決においては、訴えを不適法として却下する場合を除き、否認の請求を認容する決定が認可され、変更されまたは取り消されます(同条3項)。否認の請求を認容する決定を認可する判決が確定したとき、または、異議の訴えが所定の期間内に提起されなかったときや却下されたときは、決定には確定判決と同様の効力が認められます(同条4項)。これに対し、否認の請求を棄却または却下する決定に対しては、不服申立てをすることはできません。この場合、不服のある監督委員または管財人は、別途、否認の訴えを提起することになります。