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企業倒産

企業のための民事再生の法律相談

弁護士 宮本 督

4. 再生債務者の財産調査・財産確保

(1) 再生債務者の財産評定

 再生債務者等は、再生手続開始後(管財人については、その就職の後)遅滞なく、再生債務者に属する一切の財産につき再生手続開始の時における価額を評定しなければなりません(124条1項)。これは、財産状態と清算価値を把握するために必要とされます。

 つまり、倒産会社は、損失の計上を先延ばしにしている場合がままあるため、通常の会計処理基準に基づいて財産を見直し、除却損、貸倒れ損等を計上し、粉飾決算がある場合は、これを解消する必要があります。

 また、債権者も、再生計画案に賛成するかどうかは、再生計画の定めによる弁済率と、その企業を清算させる場合の配当とを比較しなければ判断できません。さらに、裁判所は、債権者集会での再生計画案の可決がされた場合でも、再生計画の決議が再生債権者の一般の利益に反するときは、再生計画を不認可としなければならず(174条2項4号)、再生計画の定めによる弁済率が、破産の場合の予想配当率より低い場合は、この場合にあたると解されていますので、裁判所としても清算価値を把握する必要があるのです。

 この財産評定は、管財人が選任されていない場合は、再生債務者が自ら行うとされていて、会社更生手続のように、裁判所書記官等によるチェックはされず、公正性の担保は、主として、情報開示を受けた債権者によるチェックに委ねられています。なお、債権者は、財産評定に異議ある場合には、評価人を選任するよう裁判所に申し立てることができます(124条3項)。

 ただし、東京地方裁判所では、民事再生事件全件について選任されている監督委員が、全件について公認会計士を補助者として選任して帳簿の正確性等を調査させる運用が行われています。