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企業と法律

企業倒産

企業のための民事再生の法律相談

弁護士 宮本 督

3. 民事再生と債権者

(13) 再生計画外での弁済を受けられる場合

 再生債権(再生手続の開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権)は、原則として、再生計画によらなければ弁済を受けることができません(85条1項)。
 しかし、中小企業の連鎖倒産を防ぐために、再生債務者を主要な取引先とする中小企業者が、その有する再生債権の弁済を受けなければ、事業の継続に著しい支障を来すおそれがあるときは、例外として、裁判所の許可が得られれば、その再生債権の全部または一部の弁済を受けることができることとされています(85条2項)。会社更生法に同趣旨の規定がありますが(会社更生法112条の2第1項ないし3項)、会社更生手続ではあまり活用されていないといわれています。
 なお、この弁済を許す旨の裁判所による決定は、再生債務者等の申立てによりまたは職権で下すことができるとされています(85条2項)。したがって、弁済を欲する中小企業者に、自ら申立てをする権限はありません。ただし、再生債務者に対し、この申立をするよう求められた場合には、直ちにその旨を裁判所に報告をする義務があり、また、要求に応じず申立をしないこととしたときには、遅滞なくその旨を裁判所に報告しなければならないものとされています(85条4項)。
 また、この弁済許可によっても、許可される弁済額の範囲は、あくまで再生計画により見込まれる弁済額の範囲に限られ、あくまで弁済を許可するものに過ぎず、弁済を義務付けたり、中小企業に取立権限を与えるものではありません。
 さらに、民事再生法は、少額再生債権の弁済許可の制度も設けました(85条5項。これも、会社更生法の規定を受け継いだものです。)。この制度は、少額再生債権を弁済して消滅させることによって、関係人を減少させ、手続の円滑化を図るためのものです。したがって、債権が消滅しなければ意味がないため、この許可がされる場合には、債権の全額が弁済されることになります。