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企業のための民事再生の法律相談

弁護士 宮本 督

3. 民事再生と債権者

(10) 担保権消滅請求の制度

 再生手続上、担保権が別除権として手続の制約を受けないとの原則(法53条)に対し、再建のため担保権を制限する制度が設けられています。その一つが競売手続の中止命令ですが、もう一つが担保権消滅請求の制度で、再生債務者が、その担保権の目的財産の価額を裁判所に納付することによって、担保権者の担保権を消滅させるという制度です(148条)。債務者が債務全額の弁済を行わなくても担保権を消滅させることができるわけですから、法理論上(担保権不可分の原則の修正です)はもとより、実務上も極めて画期的な制度といえます。
 この制度を利用するためには、担保権の目的とされている財産が、再生債務者の事業の継続に欠くことができないものであることが必要です(148条)が、その場合、
[1] 再生債務者が、財産の時価(これを「申出額」と呼びます。なお、処分価額であって、事業継続価額ではないとされています。)や消滅すべき担保権などを記載して、裁判所に担保権消滅許可の申し立てを行い、
[2] 裁判所が許可するとそのことを担保権者に通知し、
[3] 担保権者が、
i その財産が事業の継続に不可欠であるかを争う場合は、裁判所に即時抗告(148条4項)の手続を採り、
ii 再生債務者の示した申出額に不満な時は、価額決定の請求(149条1項)を行い
[4] 価額決定の請求がされた場合には、裁判所は評価人に財産を評価させて財産の価格を定め(150条)、
[5] 再生債務者 がその価額を裁判所に納めると担保権は消滅し(152条2項)、
[6] 裁判所は担保権の抹消登記を嘱託し、また納付された金銭を配当表に基づいて担保権者に配当する(153条)
という流れになります。