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企業倒産

企業のための民事再生の法律相談

弁護士 宮本 督

2. 再生開始決定まで

(5) 債権者説明会の開催

 民事再生の申立をした場合、申立の数日後に債権者説明会を開催し、申立に至った経過を説明し、今後の取引継続と再建に向けての協力要請を行うのが一般的です。
 債権者説明会は再生債務者が開催する私的な会合です。しかし、民事再生規則上も開催することが可能とされていて、業務及び財産に関する状況または再生手続の進行に関する事項について説明することとされ(規則61条1項)、開催後その結果の要旨を裁判所に報告するものとされています(同条2項)。また、債権者説明会には、監督委員(保全処分とほぼ同時に選任されるので、債権者説明会開催時には、既に就任済みです。)もオブザーバーとして出席して今後の業務の進め方などについて発言をすることがあります。さらに、債権者説明会は、再生債権者が他の再生債権者、取引先の動向を互いに確認する機会でもあり、すべての再生債権者が公平一律に扱われるという信頼感を与える場としても効果的です。
 債権者説明会は、再生債務者の事業再生にとって重要なポイントで、申立直後の混乱を収拾するためできるだけ早期に開催するべきです。会場を手配して出席を求める再生債権者に債権者説明会の案内を発送する準備を考えても、申立の数日後、遅くとも1週間後までに開催することが望ましいといえます。
 債権者説明会は、代表者のお詫びの挨拶から始め、その時点で把握しているとりあえずの資産・負債の状況、経営破綻に至った原因、申立に至った経過、今後の手続の進行予定、今後の取引に関する協力の要請、その際の支払条件の提示などが主要な内容となります。周到な準備は困難ですから、申立書の抜粋を基礎に、保全決定のコピー、比較貸借対照表・損益計算書、非常貸借対照表、清算貸借対照表、今後の取引条件の案内、手続進行のフローチャートなどの書類を配布して説明する程度とならざるを得ないでしょう。この段階では、再生計画案の骨子も作成されていないことが多く、具体的な計画案の提示はできなくてもやむを得ません。しかし、再生債権者・取引先の理解を得るためには、自主独立の事業再生を指向するのか、事業再生を支援するスポンサーを必要とするのか、さらには、営業譲渡の選択肢まで視野にあるのかなど、事業再生に向けての基本的な方針は示す必要があると思われます。なお、整然とした議事進行上の秩序の確保が必要なことはいうまでもありません。
 また、債権者としても、申立の直後に、再生債務者の業務・財産の状況を知り今後の対応策を決定するためにも、債権者集会には積極的に出席し、情報収集に努めるべきでしょう。