企業と法律
企業倒産
企業のための民事再生の法律相談
弁護士 宮本 督
11. 他の倒産手続との関係
(3) 他の倒産手続との優先関係
例えば、現在、会社更生手続や破産手続が進行している債務者について、民事再生の申立てをすることができるでしょうか。
まず、会社更生手続は、他の法的倒産手続に優先する最優先手続とされています(会社更生第一主義といわれます。)。したがって、民事再生手続の申立後も開始決定後も、会社更生手続の申立をすることができ、この場合、裁判所は、民事再生手続を中止することができます(会社更生法37条1項。ただし、会社更生手続によるよりも、他の倒産手続による方が債権者の一般の利益に適うと認められる場合には、会社更生の申立は棄却されます。会社更生法38条4号)。会社更生の開始決定があると、民事再生の申立てはできず、すでに申し立てられていた民事再生手続は失効します(会社更生法67条1項)。
これに対し、民事再生手続は再建型の法的手続ですから、清算型の法的手続である破産手続や特別清算手続には優先します。また、民事再生手続は、同じ再建型の法的手続である会社整理手続よりも優先します。
すなわち、民事再生の申立てがあると、裁判所は、破産手続・会社整理手続・特別清算手続を中止することができます(26条1項)。そして、民事再生手続の開始決定があると、破産手続・会社整理手続・特別清算手続の申立てはできず、すでに申し立てられていた会社整理手続・特別清算手続は失効します(39条1項)。これに対し、破産手続は効力を失うことはありませんが、手続が中止となり、再生計画の認可決定が確定した段階で、初めて中止していた破産手続が失効することになります(184条1項)。これは、民事再生手続が認可されない場合、破産手続に移行することがあるため、既に進行している破産手続を「受け皿」として残しておくためのものです。ただし、会社更生手続と同様、すでに破産手続・会社整理手続・特別清算手続が係属していて、それらの手続によることが債権者の一般の利益に適合する場合には、民事再生の申立が棄却されることもあります(25条2号)。