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弁護士 宮本 督

エッセイ:
to be a Rock and not to Roll

2013.07.25

弁護士将棋会

 弁護士には、弁護士会という業界団体があって、よくある話しだけど、その中には、趣味の集いみたいなものもある。そういうオジサンたちの寄り合いとかって、もちろん、まったく興味がなかったのだが、たまたま、弁護士会の機関誌(そういうのもあるんです。)に、将棋クラブのことが投稿されていて、「弁護士将棋会」という、まったくしゃれっ気のないネーミングはともかく、たまに千駄ヶ谷の将棋会館に行って、プロ棋士の指導も受けられるとのこと。なかなかスゴイじゃないですか。そして気付けば、その記事を執筆していたのは、仕事で関係していた知り合いの弁護士さんだったので、その次にお会いした機会に頼んで、案内を送ってもらうことにした。
 んで、先日、千駄ヶ谷の将棋会館に行って参りました。私は、子供の頃から、まあまあな将棋好きで、今でも毎週日曜日のNHKの放送はほぼ欠かさず観ている。だけど、誰かと将棋盤をはさんで対峙するなんて学生時代以来のこと。千駄ヶ谷の将棋会館を訪れるのも、プロ棋士と会うのも、もちろん初めて。
 土曜日のお昼頃から30人くらいの弁護士さんが集まって、一部は子連れ。まず初めに、誰かのお子さんの小学校5年生の男の子と対戦。あっと言う間に不利になって、間もなく負かされる。将棋会館の道場で初段の認定だと言うけど、相当強い。そして生意気。「この形で、端歩を突いたら、ダメなんだよ」だって。あーそうなんですか。しかしオジサンは悔しいんだぞ。ほんとに。よしもう一局だ。今度は本気を出しちゃうぞ。でもやっぱり、またまた軽く負かされる。子供は、私のことを諦めたように見捨て、どこか別の相手を探しに行ってしまった。私の方も、その後、何人か弁護士さんと対局。しかし、皆、強い。ほんとに強い。この人達、普段、仕事してるのかな?一人の弁護士さんにだけなんとか勝てたけど、あとはことごとく負け続けた(1勝5敗くらい)。
 しばらくすると、藤井猛さん(藤井システムを考案した超トッププロ)と、片上大輔さん(珍しい東大出身の棋士)と、女流の北尾まどかさん(片上さんの奥様)にも参加してもらう。藤井さんと片上さんは、それぞれ六面差し(盤を6枚並べて、プロが一人で6人を相手に同時対局)の指導対局をしてくれた。しかし、将棋会館の対局室でプロ棋士と将棋を指すなんて、草野球好きのオジサンが、東京ドームで、ジャイアンツのピッチャーと対戦するようなものだ。すごいことしてるぞ。今、ボク。私は、片上さんに教えてもらったのだが、二枚落ち(プロの側は飛車角なし)で、まったく歯が立たなかった。
 日が暮れてからは、中華料理屋で懇親会。棋士の皆さんも参加してくれた。弁護士たちは、将棋のことはもちろん、将棋界のことにも詳しい。弁護士さんって、オタク気質な人が多いものだが、この集まりは、群を抜いてオタク度が高い。平成○年の第○期○○戦の第○局の誰と誰の対局がどうのこうのと、いったい何なんだ?だいたい、弁護士が30人も集まって飲み会やって、仕事の話しがまったく出ないなんて、普通じゃ考えられないもん。
 しかし私だってオタクの端くれだ。翌日、盤と駒と棋書(将棋の専門書)を買った。勉強開始だ。とりあえず、あの生意気な子供。今度会ったら、ただじゃおかない。