弁護士 宮本 督
エッセイ:to be a Rock and not to Roll
テレビの弁護士がツマンナイ理由
ご覧になった方がいないことを心から祈っているのだが、最近、ワイドショーのコメンテーターとして、2度ほど、テレビ出演した。
テレビに出演している弁護士は多い。法律を題材にしたクイズ番組とかも流行ってるみたいだし、ワイドショーには、弁護士がホントによく出てくる。関係ないけど、テレビでよく見る弁護士さんが相手方になったことがあるが、恐ろしいくらいデキが悪かった。ホント、驚いた。実名を出せなくて残念。
それはそうと、バラエティー番組の弁護士って要するに脇役で、面白いと思う人だって、世間の弁護士に対するステレオタイプなイメージとのはみ出し方が笑いを誘ってるだけでしょ。ワイドショーでの弁護士の発言って、ほぼ例外なくツマンナイもん。
テレビに出てる弁護士さんって、ヤメ検(検察官を辞めて弁護士になった人)が多いのって気付いてますか?あれは、刑事事件に詳しいってこともあるかも知れないけど、それより何より、ヤメ検の人って、もともと検察官なわけで、逮捕された人の人権とか、そんなことは生まれつき配慮しない思考回路になってるから、それで、「被害者の悲しみ」とか「犯人はケシカラン」とかをクローズ・アップしたいテレビの作り手の意図とマッチするわけ。要するに、ヤメ検がテレビで大活躍してるのは、制作サイドが、自分らの意見を小難しい理屈を交えて口にしてくれる弁護士さんを出したいからなんだよね。何がいいたかったかというと、刑事事件のコメントに限った話しじゃなくて、テレビでの弁護士発言って、作り手の意図が反映されてるわけだから、連中がツマンナイ最大の原因は、テレビがツマンナイから。
でも、自分が出演してみて、ツマンナイ理由が、それだけじゃないことに気付いた。
まず、うまく喋れない。誰に向かって発言してるのか、わからなくなるから。アナウンサーちゃんの目を見て、うっとりと話せばいいのかも知れないけど、そうもいかない。大体、お話しって、相手の理解とかを確認しながら、説明し直したり、詳しい話しを省略したりするものなのに、それがさっぱり無反応だから、困るのね。
それから、誰が見てるかわからないという、不気味さが、背筋をぞくぞくさせる。リハーサルの時は笑いをとったりしていても、冗談を真に受ける人がいないとも限らないから、本番では、なかなか口にできない。弁護士バッジを、「テレビに出ることになったから、昨日、アメ横で買ってきた」なんて言って、本当にアメ横に行く大馬鹿者がいて因縁つけられたりしたら、面倒くさいったらありゃしない。それに、断定口調でも話せないよね。アタシ、アンタの言うとおりやったのに(って、全然、言ったとおりやってないのに)...、弁護士の言うことだから信じたのに(って、全然、信じていないのに)...、なんて言い掛かりをつけられるのも嫌だ。嫌だ嫌だ。想像するだけで、虫酸が走る。そんなこと考えてたら、当たり障りのない発言を繰り返すしかなくなる。
それに、あの雰囲気。ライトが眩しい。法廷とかは、弁護士にとってはホームグラウンドみたいなものだけど、テレビ局のスタジオって、完全にアウェーなのね。ちゃちなセットと無数のライトとテレビカメラと小汚い格好のスタッフの方々と着飾った美人アナウンサー。やっぱり、緊張するんだね。私って、かわいいじゃない。
そんなわけで、私も、ツマンナイ弁護士の列に加わることになりました。また、いつの日か、テレビでお会いしましょう。